こんにちは。デラ・マタドーラです。
現在、AI・自動化の技術が進歩していて、今人間が行っている仕事はどんどんAIやロボットによって自動化されると言われています。
この件について、米国の大手コンサル会社であるマッキンゼーが英語ドキュメントを公開していて、そこには2030年までに需要が減る職業、需要が増える職業の分析結果が示されています。
2017年のドキュメントで、話題のテーマなので内容をご存知のかたも多いかもしれませんが、まだ内容を知らない人向けに概要を紹介したいと思います。
◆目次
元ネタのドキュメントについて
まず元ネタとなったドキュメントを紹介しておきます。 メインは「 What the future of work will mean for jobs, skills, and wages 」という概要資料です。
一部、詳細を知りたいところがあったので こちらの完全版PDF の内容も含んでいます。
どれくらいの仕事が自動化可能か?
それでは、ここからが内容の紹介になります。
まずは「人がやってる作業ってどれくらい機械でできるの?」という点についてです。 これは、職業など関係なしに「作業全般」についてのお話です。
技術的に自動化可能な仕事の割合
既存テクノロジーで自動化可能な仕事について、3つの分析結果が示されています。
◆技術的に自動化可能な仕事の割合
- 50%の作業は既存テクノロジーを適用すれば自動化可能
- 60%の職業は30%以上の作業を技術的には自動化可能
- 5%以下の職業は完全に自動化可能
僕は正直、この数値に衝撃を受けました。 職業によって自動化可能な作業の割合は異なるにしても、全体の50%の作業は自動化可能で、さらには完全に自動化可能な職業も存在するとは。
しかし、これはあくまで「技術的に可能」なだけで、自動化するためのコストや期間は考慮していない数字です。 そのため、自動化するよりも人を雇うコストのほうが安い場合は企業は人を雇う多いでしょうし、そうでなくてもこれだけの作業がすぐに自動化できるわけではありません。
2030年までにどの程度自動化されるか?
では、実際に2030年までにどれだけの作業が自動化されるのか?
その予測数値も示されています。
前提として、職業の需要増減の要因はAI・自動化だけでなく、高齢化社会や新興国の成長など社会情勢を加味した内容となっている点に注意して下さい。
◆2030年までに自動化される仕事の割合
- 最大30%の作業は自動化される
- 最大14%の労働者は自動化により職種を変える必要がある
作業が自動化されたからといってその職業の仕事が全てなくなるわけではないですが、それでも最大で14%の労働者は職種を変える必要があるとのこと。
なお、最大○○%と書いたのは、マッキンゼーが想定しているシナリオの中でも最速で自動化が進んでいった場合の数字です。
マッキンゼーはこの自動化の速度について主に「中間シナリオ」を使用していて、中間シナリオだと2030年までに自動化される作業は15%程度です。
また、この数字は国によって違っており、完全版PDFの13ページ目には中間シナリオでの国ごとの自動化割合が記載されています。
日本は自動化の割合が一番高く、中間シナリオでも自動化率は26%となっています。 主な理由は、日本は先進国なので労働単価が高く、その割には自動化しやすい製造業が多いからのようです。
2030年までの労働需要の増減
それでは、いよいよ皆さんが一番気になるであろう職業ごとの需要の増減についてのお話です。 これも国ごとに状況は異なるので、日本における2030年までの需要増減について抜粋して、需要が大きく減る職業順に紹介します。 他の国についても知りたい人は元のドキュメントを参照して下さい。
さらに、完全版PDFの76~77ページにはより細かく職業を分類して需要増減を記載しています。
職業ごとの労働需要増減(日本の場合)
機械的な肉体労働(需要▲33%)
含まれる職業:微機械の設置・修理、プロテクティブサービス(施設入り口のセキュリティなど)、ゲーム施設労働者、皿洗い、清掃機器操作、食品調理、一般的メカニック、葬儀屋、工場労働者、物資運搬機器操作(コンベヤなど)、運送、農業機器操作。
最も需要が減るのは機械的な肉体労働を行う職業で、日本では33%も需要が減ります。
皿洗いのような単純作業は既に自動化が進んでいってますし、ファーストフードなどの調理についても食材を事前加工して単純化しているので、素人目にも自動化しやすそうですよね。
完全版PDFによると、これらの職業は葬儀屋を除いて全体的に需要が減るようです。
オフィスサポート(需要▲23%)
含まれる職業:IT労働者、事務員、オフィスサポート、調達・給与係、重役補佐。
2番目に需要が下がるのはオフィスサポートで23%減。
「IT労働者」の定義がイマイチ分からなかったのですが、プログラマーなどのIT系エンジニアは別枠で後から出てくるので、恐らくPCを使った事務作業を指していると思われます。 今の時代は事務作業にPCを使っているところが多いと思いますが、このPC作業も自動化できる部分が多いですね。 システムを作って作業負荷を減らすこともできますし、そこまでしなくても定型的なPC操作ならRPAで自動化できます。
完全版PDFによると、この職業たちも全体的に需要減です。
建設業(需要▲16%)
含まれる職業:建築技師、建築士、測量技師、建設作業員、設備の設置・修理、タワークレーン操作。
3番目に需要が減るのは建設関係で、16%の需要減です。
完全版PDFによると、この中では建設作業員やタワークレーン操作などが需要減が大きいようです。
建築士は需要ほぼ変わらず、建設技師は需要増となるようです。 設計や管理など肉体労働以外の仕事は需要が減らないようですね。
接客業(需要▲13%)
含まれる職業:飲食店サービス、販売員、セラピューティックワーカー(パーソナルトレーナーなど)、エンターテイメント従業員、美容関係(美容師、メイクアップなど)、ホテル・旅行業。
続いては接客業で需要は13%減です。
完全版PDFによると、この中ではエンターテイメント従業員、美容関係、ホテル・旅行業が特に需要が減るようです。
「エンターテイメント従業員」と機械的な労働のとこにでてきた「ゲーム施設労働者」の違いはよく分からないですが、両方とも需要は減るようですね。
教育者(需要▲8%)
含まれる職業:学校教員、大学・専門学校教員、その他教育専門職、教育補助員。
教育者の需要も日本では8%減となります。
これは自動化というよりは、日本の高齢化社会を反映したものですね。 日本の他にドイツも需要減となるようですが、米国、中国、メキシコ、インドは需要増となっています。
機械的でない肉体労働(需要▲5%)
含まれる職業:専門的メカニック・修理、救急・消防・警察、物資の運搬・積込、機械の設置・修理、農場労働者、輸送機関整備(道路整備など)、ビル・地面の清掃。
続いては機械的でない肉体労働で5%の需要減です。
内容を見ると「機械的な肉体労働」と違いは分かりにくいものもありますね。 「一般的(general)メカニック」と「専門的(specialized)メカニック」、「農業機器操作」と「農場労働者」など。 業界外の人から見ると違いが分かりにくいけど、実際は役割が異なるからこんな分け方をしているのかな・・・?
完全版PDFによると、この中では機械の設置・修理や輸送機関整備は需要減となっています。
逆に需要が増えるのはビル・地面の清掃ですが、理由はよく分からないです(笑)
クリエイティブ職(需要▲4%)
含まれる職業:アーティスト、デザイナー、エンターテイナー、メディア関係。
クリエイティブ職も4%と若干需要減です。
日本は先進国なので、エンターテイメントな職業の需要はあまり増えないということでしょうか。 中国やインドなどの新興国は、経済発展とともにレジャーに使う費用が増えることが予想されるため需要増となっています。
ケアプロバイダー(需要▲1%)
含まれる職業:医者、看護師、医師助手、薬剤師、セラピスト、健康支援、保育士、社会福祉指導員。
ケアプロバイダーの需要はほぼ変わらずの1%減です。
高齢化社会を考えると需要はもっと増えるのかなと思ってたので個人的には意外な結果でした。
完全版PDFによると、看護師や薬剤師などの需要が増える一方、社会福祉指導員などは需要減となるようです。
経営者・重役(需要+0%)
含まれる職業:経営者、重役。
経営者・重役は需要は変わらずです。
組織の意思決定をする人たちなので、よっぽどAIが発達しない限りは自動化できないですよね。 しかし、他国では需要増なのに日本での需要は変わらないという点は、日本の成長鈍化を示していて日本人としては憂鬱ですね・・・
専門職(需要+2%)
含まれる職業:営業、エンジニア、ビジネス・金融専門家、法律家・裁判官、法的支援、数学専門家、科学者、研究者。
専門職の需要は若干増の2%増です。
完全版PDFによると、ビジネス・金融専門家、法律家・裁判官、数学専門家が需要増とのこと。
技術専門職(需要+15%)
含まれる職業:コンピュータエンジニア、コンピュータ専門家。
最後は、唯一日本でも需要がそこそこ上昇する技術専門職で15%増です。
職業を見るとコンピュータ関係の専門家を指しているようですね。 AIや自動化を進める上で欠かせない職業なので納得です。
ただ、日本のシステムエンジニアはシステム開発の運営・管理がメインとなっている場合が多いので、そういう人の需要はどうなんだろうなって思います。 世の中どんどんIT化が進んでいってるので、その点では需要はまだ増えるとは思いますが、今後需要が増していくのはもっと技術に特化した人材なのかなと思ってます。
僕自身はRPAの経験はあるものの、やはり日本のシステムエンジニアという感じの仕事をしているので、この点少し不安があります。
海外の労働需要は?
上記の通り日本の労働需要は厳しい部分が多いですが、海外ではどうでしょうか?
米国、ドイツは日本同様に自動化の影響を大きく受けますが、経済成長や雇用創出という面が日本よりも高いため、日本よりも労働需要は良好となるようです。
また、新興国、特にインドは労働単価が安い上に経済成長が大きいため、全ての職業の需要増となります。 インドで特に需要が増えるのがケアプロバイダー(+242%)、教育者(+208%)、技術専門職(+129%)、建設業(+117%)です。
中国も新興国ですが、インドと比較して労働単価が高いため自動化による影響を受けやすく需要があまり増えない職業もあります。 それでも、ケアプロバイダー(+122%)や教育者(+119%)というように大きく需要が増える職業もあります。
自動化により人間は仕事を失うのか?
ここまで(特に日本は)労働の需要が減っていくというネガティブな話が多かったですが、では人間は仕事を失ってしまうのか?
ご安心下さい!
仕事が自動化されてもまだ人間に対する労働需要は足りているとのことです!!
既に書いた通り、2030年までに自動化される作業は中間シナリオだと15%、最大で30%でした。 一方、2030年までに増加する仕事の需要は29~42%と分析されています。
そのため、中間シナリオだとトータルでは14~27%の需要増となります。
需要増加の内訳は以下の通りです。
◆2030年までに増加する需要の内訳
- 現在の消費・投資のトレンドを分析すると15~22%増加
- 政府が雇用創出のための追加投資すると6~11%増加
- 歴史に従うとAI・自動化というイノベーションにより新しい職業がうまれ8~9%増加
ただし、労働者側にも変化が求められます。 自動化により仕事が減ることは避けられないので、同じ職業でも仕事内容が変わったり、転職が必要となり新しいスキルを身につけることが必要になります。
また、政府としてもスキルトレーニングや転職支援といった施策により労働者を支援しなければ、労働者が変化に対応できず失業者増加といった事態にもなってしまいます。
これから若者は何をすべきか?
最後に、「 The digital future of work: What skills will be needed? 」より若者へのアドバイスをいくつか紹介して終わりたいと思います。
- 若いときに教育を受け、そこで学んだことを使って40~50年働くという考え方は終わった。若者は生涯学習し続ける必要がある。
- 情報を処理するために必要なスキルは有用。このスキルは新しいことを学習するときに不可欠なコアスキルだから。
- 最も大事なメッセージは「自分自身で準備する必要がある」ということ。何もせず社会保障の処置を待つのは得策ではない。
- 人間は人工知能であろうが拡張知能であろうが機械とともに仕事をするようになる。つまり、機械に人間の代わりをさせるために、よりスキルが求められる。
- 息子たちには、他者とつながったり説得力を認められるように分析スキル、創造的スキル、ヒューマンスキル、自己提示のようなものを考えるよう言っている。
- あなたは何に夢中で、それにはどのようなスキルセットが必要?スキルセットに需要がある領域の専門家になりなさい。
- 機械が得意なことをやる必要はないが、それについて理解はすべき。それらについてよりシステムレベルの観点をもち、コンピュータ科学の考え方ができるようになりなさい。
- 今まで考えたことのない仕事に挑戦すること。あなたが得意とすることや可能なことへの思い込みに挑戦できることは、あなたを幸福と成功に導く大きなチャンスを産む。